青い石

 青池保子氏のコミック、『エロイカより愛をこめて』の31巻が出ていたので、大喜びで購入し、楽しく読んだ。高校生の時からなが〜くこの漫画を愛読しているが、今回も番外編が3本並んでたいそうおもしろかった。中でも少佐がケーキを作る「心理実験プロジェクトS」が(私にとっては)秀逸。苦手な仕事にもこういう姿勢で取り組み、同僚とのコミュニケーションもこういう感じ(無駄な鎧なし)でとれば、仕事面ではうまくいくのかもしれない。後者は特に私には難しいけれど。
 コミックと一緒に作者のエッセイ『「エロイカより愛をこめて」の創り方』も売ってあったので、こちらもすぐさま購入した。これはまだ読んでいないが、大変おもしろそうである。表紙や口絵や写真を見ても、ドキドキだわ。期待期待期待〜!!!!!と思っていたら、なんと裏表紙と口絵の、作者の仕事場と思しき写真に、ラピスラズリ(と私には思える)のエッグの磨きが映っているではないか!!!!!ラピスは顔料にもなっているし、頭をすっきりさせたり、頭脳を明晰にしたりしそうな石だ。大好きな漫画家さんも愛玩していて、時々はこの石に創造力を刺激されているのかもしれない、と思ったら、今までちょっと敬遠していて疎遠だったラピスも、日常的な身近な石に感じられ、大変嬉しかった。
 話は変わるが、いつもロムって勉強させていただいているCEDARさんのBBSで、NHKで昨日放送されたドキュメンタリー、「サファイア・ラッシュ」のことが話題になっていた。石が好きで、可能な限り買い集めている私にとって、これは衝撃の内容であった。
 いや、たぶんうすうすわかっていたことなのだが、目を向けようとしなかったことを具体的につきつけられた感じだ。
 私はこの番組を見なかった(気がつかなかったので。石好き失格ね)が、CEDARさんの書き込みを読んだだけだもいろいろと想像できた。私の欲も、採掘にかかわる人たちの欲も、(認めたくはないが)きっと同じだ。
 採掘技術が未熟なために生き埋めになる子供も多い、という記述には本当に心が痛んだ。サファイアこそないものの、私の手持ちの石にはマダガスカル産がてんこ盛りだ。「マダガスカルとは変わった生態系の、石がたくさん出る素敵な島だ」と思っていたが、私の持ってる石が出た鉱脈の近くで、ひょっとしたら子供が生き埋めになっているのかもしれない、などと思うとなんとも言いようがない。「あの子の見つけたた美しい石は、流れ流れて、日本の極楽トンボのものになりましたとさ。」などという話では、あまりにも悲しくて無情だ。
 このことをはっきりと認識したからといって、私が「もう石を買うのはやめましょう」という結論にたどりつくことはないと思う。今後も間違いなく欲望にまかせて石を買ってしまうだろう。ただ、陳腐な結論ではあるが、「この事実を常に心にとめておく」ということは大事だと思う。
 資本主義社会とは、きっと何事についてもこういうもので、私を取り巻くすべてのものが程度の差はあれこういう流れたどっているのだろう。そのことも洞察すべき時なのかもしれない。
 そういえば毎日いろいろお願いをしているプログラミングされたサファイア、あれは軍事政権下のミャンマーはモゴック産だったな。ミャンマーの人々は穏やかで自然に溶け込んだ生活をしていると、今年の初め椎名誠氏が新聞に書いておられるのを読んだが、このサファイアはいったいいかなる採掘・流通を経て、私の手元に届いたのだろうか。
 「サファイア・ラッシュ」、ぜひ見たいが、再々放送してくれるかなぁ…。NHKさん、脳天気な私を戒めるためにも、ぜひぜひ再々放送をお願いします。