エンタテイメントな日

 今日は、家虫・ロズ子にしては、充実した日曜日であった。近くでやってたアルフォンス・ミュシャ展を見に行き、スーパーをうろつき、その後フィギュアスケートグランプリシリーズの中国大会を見て、と、結構五感を刺激する1日だったのである。
 ミュシャ展は、今日が最終日であった。実はあまり行く気はなかったのだが、美輪明宏氏が薦めるのを聞いたので、「じゃ、あたしもアールヌーヴォーを堪能してこようかな。」と出かけたのである。例の、「ゾディアック」とか「四季」とか、有名なポスターももちろんあったが、存外に点数も多く、「明けの明星」とか「宝石」などの作品も見られたので、大変良かった。
 実は昨日amazonから『楽園の蛇』が届いて、その冒頭にニーチェの言葉が引用されていたのだが、いわく「天に達する木は、その根を地獄に下ろさねばならない」だって。あああ、ニーチェのころも(というか、たぶんそのずっと前からも)、同じことが言われ続けてきたのね、とちょっと感慨無量だった(大げさ。)のだが、おそらくミュシャも、地獄に根を下ろし天に達した人の一人なのであろう(印象)。ちなみに「宝石」は、トパーズ、ルビー、アメジスト、エメラルドの4枚であった。ミュシャの色調って、全体的にトパーズっぽい。
 グランプリシリーズ中国大会は、女子シングルの放映であったが、私はこれを見て涙目になった。浅田真央も、荒川静香も、イリーナ・スルツカヤも、大変に素晴らしい。浅田真央なんか、ジャンプを飛ぶたびに(たとえそれが失敗しても)嬉しそうに笑って、本当に天使のようだ。スルツカヤも演技自体が完全なエンタテイメントになっていて、私も涙目で見たが、たくさんの人を感動させることができる人ってなんて素晴らしいんだろう、と思った。
 三者三様の美しさは、例えれば荒川静香がルビー、イリーナ・スルツカヤがレッドオブシディアン浅田真央がピンク・トルマリンといったところであろうか。ううう、フィギュアスケートって、これだから大好きよ!!!!!
 そして今日はもう一つ、心に残る出来事があった。歌手の本田美奈子さんが、10ヶ月間の闘病の末、亡くなられたのである。記事から推測するに、厳しい病状と苦しい治療だったのではないかと思う。
 私は以前、本田美奈子さんについて、「好きでも嫌いでもない」と書いた。だが、印象に残る歌を歌う、印象に残る人であった。「1986年のマリリン」、「one way generation」、そして「つばさ」。近年のアルバムのジャケット写真は、「天上に近づいた」感じを思わせる、美しく、白く、光あふれるものが多い。
 死を予感して作ったわけではないだろうが、あとになって振り返ってみれば、「ああ、そうだったのかも」と思うようなことはどんなことについてもあるものだ。芸名に付け加えた.(ドット)だって、「ピリオド」とも読める。こんなことはこちらの邪推だが、痛ましいことである。
 今回の訃報を知った私は早速、本田美奈子のベストアルバムを注文した。「つばさ」がアルバムの最後に入っている。これから宇宙のような地球のようなラピスラズリの丸玉を見るたび、アルバムを聴くたび、私は美奈子さんを思い出すだろう。美奈子さんもエンターテイナーとして、歌で、ミュージカルで、たくさんの人を涙目にしてきたに違いない。悲しいけれど、そしてご本人はもっともっと活躍したかっただろうけれど、きっと「人を感動させる」という役割をすべて果たされ、天に達したのであろう。
 やっぱり好きだったのかなー、本田美奈子さんのことを。そんなふうにしみじみ思う、日曜日の夜である。